■アサエルの購買行動類型はとても分かりやすいモデル

消費者行動モデルに関する研究は少なくとも半世紀以上行われてきていますが、そのなかで以前の本消費行動研究レポートにて「アサエルの購買行動モデル」について紹介しました。同モデルはタテ軸を製品のブランド間の認知差異の高低、ヨコ軸に消費者による製品関与、購買関与のレベルの高低で、4マスで整理された購買行動類型です。具体的には①情報処理型、②認知的不協和解消型、③バラエティシーキング型、④慣性型という4マス整理になります。多数存在するモデルの中でもシンプルで分かりやすく、消費者の立場で思考した際に具体的なイメージができやすいモデルであると私は感じています。具体的な図式で示すと次の通りとなります。ネット上にはこのモデルを解説している他のサイトがいくつか見られますので、消費者行動を研究している方々には馴染みのあるものではないかと思われます。

アサエルの購買行動類型

出所:Consumer Behavior and Marketing Action(Henry Assael)を参考に作成

尚、同モデルについては上の図式の通りですが、実態を踏まえ少し補足を付けたいと思います。

■ネット社会における同モデルの適用性

インターネットは情報の入手を容易にするものであることから、程度の差はあれども、情報の非対称性の解消に資するものであると言えます。特に製品の供給側のみならず、SNS等によって消費者目線での有益な情報も入手できるため、情報の非対称性解消のレベル感もある程度高いと推測されます。そのような現実を踏まえれば、ネット社会における従来型の消費者行動モデルは引き続き適用性があるものなのか、必然的に疑念を抱いてしまいます(※注意:AIDMAに続くモデルにはインターネットやSNSを前提としたものがいくつか存在しています)。そこで、アサエルの購買行動類型を題材に、ネット社会における同モデルの適用性について考えてみました。ネット社会ならではの次の点に鑑みれば、同モデルは優れたモデルと言えるものの、やや陳腐化しているのではないかと私は考えます。

  1. ECサイト上のレビュー、比較サイトの情報、SNSでの情報が充実していることもあり、消費者が利用者目線での製品情報を入手しやすくなっているため、①~④のカテゴリー問わず、どのような製品でも金額の多寡を問わず買い物が失敗しないように消費者は小まめに検索することが常態化している。
  2. 仮に購入が失敗したとしても、メルカリなど二次流通市場が確立しているため、売却を念頭に置きながら思い切って購入することも想定される。よって認知的不協和を低減する必要性が薄れてきていると考えられる。

また、ネット社会如何を問わず、製品のカテゴリーに関係なく企業側が製品ブランド(企業ブランドを含む)を構築しようと試みています。これにより、ブランド間の認知差異が以前よりも明確化してきていると考えられます。したがって④慣性型が少なくなっている可能性も想定されます。以上のことから、アサエルの購買行動類型については、ネット社会においてやや陳腐化してきているように個人的には思えます。

■カテゴリーレスによるフラット化

これらのことが何を意味するかですが、製品特性に基づく①~④によるカテゴリー分類が薄まっている、即ちカテゴリーレスな時代になっていると考えます。換言すれば、消費者による製品の購買行動がフラット化してきているとも表現できるでしょうか。もちろん100%フラット化しているということではありません。しかし、カテゴリー分類が薄まってきていると言っても過言ではないように思えます。この傾向が今後強まってくるとすれば、事業者によるマーケティングの在り方や販売におけるチャネル戦略の在り方が再考される必要性も出てくるのではないでしょうか。