【マンスリーReview】2022年5月

月単位で流通全般(ECを含む小売市場、物流、卸売)を振り返り、気になったリリース情報、出来事、ニュース、動向等を書き記します。

■商業動態統計(2022年3月確報分)※経済産業省

小売業全体の商業販売額は13兆588十億円と前年同月比でプラス0.7%増となりました。百貨店やスーパーの売上が回復してきているようです。コロナの新規患者数が比較的抑えられており、実店舗が好調であることがその理由と言えるでしょう。一方卸売業全体の商業販売額は、39兆623十億円とプラス7.2%でした。1月、2月が10.9%、8.6%のプラスでしたので、やや鈍化したように見えますがそれでも非常に増加率です。鉱物・金属材料卸売業がプラス33.8%、食料・飲料卸売業もプラス4.2%です。値上げが断続的に行われていますが、卸売業がこのような状況ですので、今後も一層の物価上昇となることが見込まれます。

■気になった決算情報

楽天の’22/12月期Q1決算によれば、国内ECのGMVは前年同期比でプラス10.0%と引き続き好調です。ただし携帯事業の費用負担のため全体では赤字です。BASEの’22/12月期Q1のGMVは前年同期比プラス9.3%でした。BASEにしては少し控え目な伸びです。尚、同社も営業利益は赤字です。オイシックス・ラ・大地の’22/3月期年度決算は売上高1,134億円とこちらも好調です。しかしセグメント別に見るとOisixはプラス17%ですが、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやは前期比マイナスとなっており、バラツキがみられます。化粧品ですが、資生堂はプラス10%台半ばで得意先ECが好調とのこと。ポーラ・オルビスはPOLAのEC売上は前年同期比プラス7.0%、ORBISはマイナス10.5%と分かれました。

■百貨店がEC事業に本腰

伊勢丹三越の決算説明資料によれば’22/3期の「オンライン売上」372億円を’24/3月期には600億円超へ伸長させる計画とのこと。エイチ・ツー・オーリテイリングも決算説明資料によると’22/3月期の「EC・リモートオーダー」の売上102億円を’24/3月期?には250億円に引き上げるとのことです。また、J.フロントリテイリングは’22/2月期の決算説明資料にて’22/2月期の「オンライン経由売上高」150億円弱を’24/2月期には400億円(※共にグラフから推測)へ、そして髙島屋も同様に22/2月期の決算説明資料にて’22/3月期の「ネットビジネス」の売上323億円を’24/2月期には500億円へ伸ばす計画とのことです。ここにきて各社がECに本腰を入れ始めた感があります。各社呼び方がまちまちで、正確な定義が各様な気がするのですが、一旦細かいことはさておき、各社計画通り進むか否か、見守りたいと思います。

■ANAグループがライブコマースを開始

ANAグループの企業ANA Xが「ANA LIVE SHOPPING」を開始しました。もともと同社はANAマイレージクラブの企画・運営などを手掛けている会社です。日本航空もそうですが、航空会社は機内販売を行っているように、物販事業は積極的です。コロナで航空業界も相当厳しい経営環境であり、CAが他業種に出向するといった大胆な戦略をとっていますので、ライブコマースをやること自体特段驚くことはありません。ポイントは、誰がどのようにライブを行うのかということだと思います。ライブコマースは「商品の本来的な魅力」×「喋り手による人を引き付けるトーク力」によって成立します。どのような成果を収めるのか注目です。

■青山ファッションカレッジが’23/4よりファッションテック科を開講

学校法人原学園の専門学校青山ファッションカレッジが’23/4に新たにファッションテック科を開講すると発表しました。リリースには「ファッションECサイト制作・運営、デジタルマーケティングといった職種で活躍する人材の育成」と書いてあります。背景にはアパレルのEC化の流れがコロナ禍で加速していることが挙げられるでしょう。Webサイトのデザイニングに関する専門学校はこれまでにも多数ありますが、ECサイト制作・運営・デジタルマーケティングといった人材育成はこれまでにどれくらいあるのでしょうか。EC化率が2023年には10%を超えようとしています。EC専門の人材育成は実は後手になっているのではないかと思っています。このような流れは素晴らしいと思いますので、是非頑張っていただきたいものです。

■進化するラストワンマイル

日本ネット経済新聞に「進化するラストワンマイル」 シリーズが掲載されています。5月19日号の第1回ではクイックデリバリー普及がテーマです。ECプラットフォーマーを中心にこれまで短時間配送が競われてきましたが、最近はクイックコマースという言葉もあるように、一層競争度合いが高まっています。Woltが自社配送網を他社に開放するという動きも見られ、ますますラストワンマイルが進化しています。すぐに届くことは消費者にとって良いことだとは思いますが、気になるのは配送品質と事業者側のコストです。私自身デリバリースタッフの応対等が気になることもしばしばありますし、不当な賃金で働かされていないかも気掛かりです。消費者向けのサービスレベル向上は良いことでしょうが、サービスレベルは不可逆的です。もとに戻れない上に、仮に何かしらの犠牲の上に成り立っているのであれば、本当に良いことだろうかと思ってしまいます。関係者の努力に期待しましょう。

■改正消費者契約法が成立

改正消費者契約法が5月25日に成立しました。背景にはサブスクの普及があります。解約の手続きが分かりづらい経験は皆さんもおありでしょう。法律関連のネタになりますので、私の説明が誤解を招くリスクがありますから、詳しくは以下のサイトまたは検索の上詳細な情報の取得をお願いします。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/26/news137.html
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1412281.html

■デジタル広告P/Fが対処すべき対応方針を政府が示す

5月16日に開催された政府デジタル市場競争会議のワーキンググループにて、経済産業省より各課題に対する対処方針案が示されました。もともと政府はデジタルプラットフォーム取引透明化法を施行しており、広告のデジタルプラットフォームもその中に含まれるとしていました。課題にはアドフラウド等デジタル広告の質に係る問題、価格や取引内容の不透明さなどが挙げられており、それぞれに対応の方向性が示されています。具体的には次のWebサイトをご参照ください。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi_wg/dai37/wg_siryou.pdf
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi_wg/index.html

■物価上昇に関する政府対策について

物価が上昇しており、いろいろなモノの値段が上がっています。これに対し政府は各種支援策を講じていますが、発生している事象に対する対処であって根本的な対策ではないように思えます。言わば即効薬であって特効薬ではありません。物価上昇には良い上昇と悪い上昇があると思っています。今の物価上昇は原価の上昇に起因しており利益が伴いませんので、悪い物価上昇でしょう。私は根本対策として「エネルギー政策」「流通構造改革」「食料自給率の向上」が重要だと考えています。突っ込みがあるかもしれませんがそれはさておき、では“ECで何ができるか”でしょうか。深いテーマですので、私自身熟考の上、何かの機会にECができることついて触れることが出来ればと思います。

 

以上