月単位で流通全般(ECを含む小売市場、物流、卸売)を振り返り、気になった出来事、ニュース、動向等を書き記します。

■Amazon、楽天の決算発表

米国現地日付の2月3日、Amazonが2021年の決算発表を行いました。アニュアルレポートで日本の売上をチェックすると、2021年は23,071百万USDとされています。為替レートを115円で計算すると、2兆6,532億円となります。為替レートを2020年と同じと仮置きすれば、2020年比で12.8%の伸長率です。楽天も2月14日に2021年12月期の決算発表を行っており、国内流通総額(物販系ECだけではなく取り扱う全ての国内ECの流通総額)を計算してみると5兆118億円となりました。こちらはAmazonよりも伸長率は低く、2020年比で10.4%です。楽天は物販系以外も数字に含めていますのでAmazonとの比較はやや難しいのですが、それでも物販系ではAmazonの方が伸長率は高いことは間違いないでしょう。Amazonと楽天の伸長率が以上の数値ですので、日本全体の物販系EC市場規模で言えば、伸長率は10%弱程度ではないかと私は推定します。コロナ禍2年目での伸長率としては立派ではないでしょうか。関係者の努力に敬意を表したいと思います。

■フリマのGMV(国内CtoC-EC市場規模)の臨界点はいかに

メルカリも2月3日に2022年6月期のQ2の決算発表を行っています。2021年7~12月半年間のGMV(国内流通総額)が前年同期比17.0%増の4,302億円とのことです。これまでのハイペースと比較すれば鈍化とも言えますが、それでも17.0%の成長は驚異的です。一方楽天のラクマですが、GMVは数年前から非公開です。2018年ごろに1,000億円代と私は推定していましたが、依然として非公開であることを考えれば、それほど伸びていないと想像します。フリマ2強のGMVを合算すると1兆円に届くレベルかと推定されます。10年もたたずにこの数値は驚異的ですね。しかし、メルカリの成長率が落ち着き始めています。そろそろ臨界点が見え始めているかもしれません。全くの予想でしかありませんが、メルカリの成長率の鈍化が鮮明になってくると仮定すれば、2強以外の事業者も含めたフリマのGMV(国内CtoC-EC市場規模)は1.3~1.5兆円あたりが臨界点かもしれません。これはあくまでも予想に過ぎませんので、引き続きウォッチしたいと思います。

■コロナのピークを迎え2月後半の東京の人出は増加

2月に新規感染者のピークを迎えましたが、高止まりしており予断を許さない状況が続いています。私は東京都に住んでいますが、大規模ターミナル駅近辺を通ると多くの人々が往来していることが分かります。公益財団法人東京都医学総合研究所発表の東京都内主要繁華街滞留人口モニタリングのデータを見ますと、2月後半は前半よりも人出が増加しているようです。コロナ禍で人出を嫌う/気にしないといった考え方の相違はありますが、それはここでは脇に置いておいて、やはり人出が多くなれば実店舗の売上は必然的に上昇します。執筆時点で2月の実店舗のデータはないのですが、おそらくそうなるでしょう。とすれば、ECはどうなるのかといったことが気になります。日本の個人消費の全体額はほとんど変わりませんので、どちらかが増えればどちらかが減るトレードオフの関係にあります。EC市場自体のファンダメンタルは増加傾向にありますので、全体の市場規模がいきなり前年比マイナスにはならないでしょうが、個々の企業レベルでいえば、相当気になることでしょう。

■ライブコマースがじわっている

EC関連のニュースを見ていますと、ライブコマースに関する動向を多く目にするようになった感があります。ライブコマースは中国特有の動向ではと思う人もいるかもしれません。実際中国におけるライブコマースの盛り上がり方と日本の状況では大きな乖離がいまだにあります。しかし、どうやら日本でも徐々に盛り上がりつつあるなというのが率直な感想でしょうか。考えてみれば昔からTV通販番組はありますね。視聴者は高齢者だと思いますので、ネット上でのライブコマースとはターゲットが相違するかもしれませんが、土壌は元々あると考えられなくもありません。経済学でいう財の性質上「経験材」に相当する商品は、情報の非対称性解消が要点です。ネット上の静的な情報だけでは物足りなさを感じることも多ですよね。ライブコマースでは商品の要点やストーリー性、世界観を訴求できますので、ECが当たり前の時代になった上で、来るべきして来たと言えるのではと思います。

■ロシアによるウクライナへの侵略について

ついに恐れていた事態が現実になってしまいました。本当にあってはならないことです。私は前職時に2015年からコロナが流行する2020年初にかけて、日本政府関連の案件として出張でロシアには合計で27回渡航しました。ロシア人の知人も多くいますし、たくさんの仕事を共に進めてきました。しかしそのような努力が水泡に帰した感を否めません。日露経済協力の枠組みで日本政府も相当な金額を投じてきました。いわば血税が投入されてきたわけで、本当に残念です。例えばロシア政府側の強い要望でシベリア鉄道を利用した欧州向けの輸送も推し進められていましたが、これからは厳しいでしょう。この事態によって世界レベルでの経済に少なからず様々な影響が生じることは間違いありません。当社はECをテーマにした企業ですので、越境ECへの影響が気になるところですが、今後発生する変化については注意深くチェックしてきたいと考えています。

以上